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テクニック - Technique - テクニックと身体の使い方 (壁 - - 固定と力の入れ方) < back - next >


それでは、これから「壁」について説明したいと思います。

その前に質問ですが、パントマイムで「壁」を表現するために一番大切なことは何でしょう? ・・・この答えがすっと出てこない人は、もう一度「テクニック、その前に」を読んでくださいね。

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さて、繰り返しになりますが、壁に限らずパントマイムで何かを表現するのに一番大切なのは「イメージ」です。パフォーマーがしっかり壁を意識できていれば、それが動きにも反映されます。

では、まず壁のことを考えましょう。目をつぶってもかまいません。「壁」と聞いて、頭に浮かんだイメージはどんなですか? レンガの壁? コンクリート? 材質だけでなく、色、高さ、壁の厚さ、固さ、質感、ひょっとすると匂いがするかも・・・。頭に浮かんだイメージをしっかりつかんで、壁の隅々までイメージを広げてください。

ではまず、テクニックを意識せずに、普通にあなたのイメージした壁にさわってみましょう。目をつぶっていてもかまいません。ゆっくりとていねいに、自分だったらどんな風に壁にさわるか思い出しながら、壁にさわってください。

もちろん、実際には壁などないのですが、これでもかとイメージしていると、ふっと指先に壁を感じることがないでしょうか? もし、この感覚を得られたら、もう壁の9割はマスターしたようなものです。
最初のうちは特に、イメージづくりに時間をかけてください。イメージするというのは、集中力のいる作業です。イメージづくりにスッと入れる癖をつけておけば、あとあと役に立つことうけあいです。

慣れてきたら、いろいろなさわり方をしてみましょう。目をつぶっていた人は、目を開けてやってみてください。まだテクニックを意識する必要はありません。しかし、ゆっくりとていねいに、イメージを壊さないように、壁にさわってください。

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それでは、身体の使い方について説明しましょう。
パントマイムには基本となる身体の使い方がいくつかありますが、壁では主に「力の入れ方」と「固定」という2つの身体の使い方で、壁がそこにあるかのように見せています。

力の入れ方

今までは自由な形で壁にさわっていましたが、壁がそこにあるかのように見せるためには、さわり方にちょっと工夫をします。

まず目の前にある壁に手を近づけます。このとき、手の力は抜いておきます。
手の使い方(1) - hand(1)

そして、吸盤を壁に押しつけるときのように、指の腹や手のひらを壁に押しつけて、平らにしていきます。
手の使い方(2) - hand(2)

手のひらが壁についたときには、手は完全に平らで軽く力を入れます。手はピンと張った状態になります。
手の使い方(3) - hand(3)

しつこいのは承知していますが、このときも壁のイメージはしっかり頭にキープしてください。イメージした壁の材質の質感を手に感じますか? 手の動きに気をとられてイメージがおろそかにならないように。

壁から手を離すときは、逆に手を緊張させてピンと張った状態から、吸盤に空気が入っていくように、手の力を抜いてすぼめていきます。壁から離すのですから、手は後ろに少し引くことになります。

この力の入れ方(緊張と弛緩)によって、壁の固さが見えてきます。壁から手を離し、手の力を緩めたそのときに壁が浮かび上がる、とも言われます。

壁 - wall(standing position)
この方法で、壁のいろいろなところをさわってみてください。


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壁を見せるためには、壁の特徴をもう一つ表現する必要があります。
その特徴とは、壁が動かないということです。
壁に手をつけている間は、壁に手が支えられている状態です。壁が動かない以上、壁にさわっている手も動きません。

では、手で壁をさわったまま、身体を前後左右に動かしてみましょう。手は壁をさわったまま、つまり手は動かさずに身体を動かします。ゆっくり、ていねいに身体を動かしてください。

手を固定したまま動く - move, with the hands fixed 手を固定したまま動く - move, with the hands fixed

固 定

このように身体の一部を「動かさない」ことをパントマイムでは「固定」とか「空間固定」とか言っています。 そのまんまですね。
しかし、この固定という身体の使い方はパントマイムで物体を表す基本中の基本です。

壁の場合、手を固定するわけですが、単に手を止めておこうとがんばっても、まあたいていは動いちゃうもんです。 特に慣れないうちは手に余分な力が入ったりして、ぷるぷる震えたりします。

この固定を行ううえでポイントとなる点は、2つあります。

第一のポイントは「分解(アイソレーション)」です(「分解」って何?と思った方は、「首の運動、分解 その1」、「分解 その2」を参照してください)。

ここで、「分解」の定義を思い出してみましょう。
分解は「身体の一部だけを(ほかの部分は動かさずに)動かすこと」でしたね。 一方、今やってる固定は「身体の一部だけを動かさずに止めること」です。分解と固定はちょうど表裏の関係にあります。
もう少し正確に言うと、分解の中でも、止まっているところより動かしているところの方が多いのが固定です。ですから固定は広い意味では分解の中に含まれます。

分解でも強調しているように、固定でも「無駄なところに力を入れない」ことが重要です。無駄なところに力を入れると、動かなくていいところが動いてしまいます。
壁の場合、手首から先は可能な限り力を抜きます。手首に妙な力が入ったりすると、手が動いてしまうわけですね。


固定でもう一つポイントとなるのは、- もういいかげんしつこいですが -、イメージです。
結局、気持ちの持ちようなのですが、「手を止めよう」と考えるのではなく、「手が壁に支えられている」と想ってください。不思議なもので、こう想うだけで動きの感じが全く違ってきます。

目 線

ところで、壁を表現するうえで、もう一つ大事なポイントがあります。
それは目線です。目の前に壁があるのですから、手のある位置と同じ平面に視点を合わせます。壁の向こうは見えません。そのことも忘れないように。

もっとも、今イメージしているのがガラスの壁とか窓なら、向こうが見えていたって構いません。視線を自由に使うことができます。・・・逆に言うと、壁がガラスかそうでないか区別する最大のポイントは目線なわけですね。

一度、ガラスの壁というのもやってみるようにしてください。慣れてきたら、ショーウィンドウとか、ガラスの向こうに行きたいのだけどガラスが邪魔で行けないとか、いろいろとイメージをふくらませてやってみましょう。


机 - 固定の応用

では、固定の応用です。

机 - table(or desk) 机 - table(or desk) 今度は、机を出してみましょう。

高さが腰くらいの机を、例によってイメージしてください。どのくらいの大きさか、どんな形か、材質は何か・・・。

イメージができたら、机の天板の上に手を置いてください。手の使い方、力の入れ方は壁のときと同じです。


手を机の上に置けたら、その手を固定して、身体を上下左右、前後に動かしてみましょう。

このときも、ゆっくりていねいに動かしてください。
「手を動かさない」と考えずに、あくまで「机に手を乗せている」イメージです。机が手を支えている感覚を思い出してください。

机に手を置いて身体を動かす - move, with the hands fixed on the table(or desk) 机に手を置いて身体を動かす - move, with the hands fixed on the table(or desk)



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