タイトル・ロゴ - Title Logo


About - - - パントマイムについて

パントマイムにもいろいろ

パントマイムと聞いて思い浮かぶイメージは「白塗りの人がやってる壁」や、「道端でやってるロボット」といったところではないでしょうか。「パントマイムに、こんなページ作るほどの内容があるの?」と思う人もいるかもしれません。

なんのなんの。パントマイムの世界も、なかなかに奥が深く面白い世界です。少なくとも「壁」と「ロボット」だけで終わる世界ではありません。壁とロボットしか知らないよと思っている方だって、パントマイムと意識せずにパントマイムの世界をかいま見ていることは案外多いのです。

たとえば、ブームは過ぎた感がありますが、ローワン・アトキンソンの "Mr. Bean" をごらんになったことはないでしょうか? 主役の Mr. Bean はほとんど言葉をしゃべらない、パントマイム的要素の非常に強いコメディです。
彼の舞台のライヴ・ビデオを見る機会がありましたが、舞台ではものを使うことも少ないためいっそうマイム色が強い作品がそろっていました。

ほかに有名なところでは、もう一昔以上前になりますが、マイケル・ジャクソンのムーン・ウォークがあります。あれはパントマイムの歩き方のテクニックから派生したもので、その原形は、第二次大戦当時のフランス映画『天井桟敷の人々』ですでに演じられています。

映画と言えば、チャップリンやバスター・キートンの出演していたような無声映画も、パントマイムの一種です。無声映画ではないけど、マルクス兄弟のハーポ・マルクス(ちりちり頭のしゃべらない人です)や『ぼくの伯父さん』のジャック・タチも実に優れたパントマイミストですね。

一方、映画やテレビの一部ではなく、マルセル・マルソーのような舞台で作品を演じるパントマイムをご存知の方も多いでしょう。そこで演じられる作品は、「壁」のような技術を見せるだけでなく、舞台に一つの世界を作り出しています。
たとえば、マルソーの「青年・壮年・老年・死」という作品は・・・舞台中央で人間がゆっくり歩いています。最初は若々しく胸を張って歩いている姿が、歩みを進めるにつれてゆっくりと肩が落ち、いつのまにか歩幅も小さくなり、やがては腰が曲がり、最後には歩みが止まる・・・。言葉にすると非常にシンプルになってしまうのですが、短い時間の間に人生を描いてしまう作品です。

パントマイムはただの技術というだけではなく、一つの世界を作り出せる表現手段なのです。


「パントマイム」の意味?

言葉の面から「パントマイム」とは何を表すのか考えてみましょう。
辞書で「パントマイム」を引くとたいてい、「無言劇」とか「言葉を使わず身振りだけで表現する劇」といったような定義になっています。この定義にあるように、パントマイムは言葉を発しない劇の一種と考えれば、だいたいは正解です。

しかし、実際にパントマイムの公演などを見に行くと、言葉を使うこともあれば、一見ダンスか舞踏のようにしか見えないものまで様々です。これでは埒が開かないので、もう少し柔軟な定義を考えてみましょう。

辞書の定義にもあるように、オーソドックスなパントマイムは、(原則として)言葉を使わず、また、小道具や大道具も(原則として)使わない劇の一種です。
これは普通の演劇などに比べると、ずいぶんきつい制約のように思えるかもしれません。しかし逆に、どんな場所でも演じることができ、言葉の通じない人に対しても分かってもらえるというメリットがあります。

それに、「絶対に言葉やモノを使ってはならない」という義務があるわけではありません。必要なら、言葉を使っても構いませんし、小道具などは実際よく使います。しかし一般の芝居とは違って、「長台詞で観客を魅了する」とか「豪華なセットで観客を眩惑する」とかそういうのは、パントマイムでは狙わないということです。

これを煎じ詰めると、可能な限り身体一つでやっていこう、という(主に舞台での)表現スタイルが、パントマイムやマイムの広い定義になるように思います。


−−

また、「言葉を使わない」、「身体一つで表現」ということで、ダンスや舞踏、舞などに近い関係にあると考えることもできます。
これらとパントマイムの違う点は、パントマイムのほうが具体的な事象や物語を扱うことが多い点、パントマイムでは最初から最後まで音楽に合わせて動くことはあまりない点になるでしょうか。しかし、抽象表現のマイムなど、ダンスや舞踏と区別が付かないようなものだってあります。この辺は、無責任なようですが、演じる側がマイムと言ってるかダンスと言ってるかにかかってきます。

−−

ずいぶん抽象的な話になってしまいましたが、別に伝統芸能みたいに流派があるわけでももないんで、あまりカチッと考えることはないというのが本当のところです。定義に頭を悩ませず、実際に見たり身体を動かしたり、ここのページや本を読んだりしてパントマイムとはどんなものか味わってみてください。






< about page index
main >>
technique >
resource >
etc >